北方のケルキパ共和国では 春に咲く喇叭のような花被片がついた黄色や白色の花 そう細い葉が根もとからすらすらと伸びるあの花のことを 『復活祭の百合』と呼んでいた 移動祝日なので 咲いていない年もあったけれど 大体この時期には咲きはじめている
外はまだ雪が残っているので 卵はうちのなかに隠す 屋根裏 寝室 台所 こどもたちの数だけちゃんとあるから大丈夫 隠したまま忘れることもない
くだらないことは日記に書けばいいので ここにはくだらないことしかない 本当のことを書けば愚痴なるから書きたくない いらいらするのはPMSだけど 高層マンションの非常階段を見ても「あそこから落ちたら死ねそう!」とは言わなくなったし 恋人に当たり散らすこともやめた 面倒だからもう全部無かったことにしたい くだらないことしか言えない 本当のことを言って否定されるなら言いたくない くらくらするのは低血圧だけど 朝起きられない理由にならないし 副作用が酷いから薬を飲むはもうやめた 億劫だからもう全部無かったことにしてほしい なんて不完全なんだろう そうして耐えられないわたし自身の存在に嘔吐したんだった