1022
初めて異様な視線に気づいたのは二十歳になるかそこらの頃だった 舐めるようではなく 突き刺すように ほとんど悪意を感じる強い視線だ 実際に彼がわたしを憎んでいたかは知らない たったいま会ったばかりの見ず知らずの他人同士で もし恨まれるようなことをしていたとしたらわからないけど 最後の一点になったケーキを目の前で取るとか 何度もATMの操作を誤って手間取って後ろにひどい行列を作っているとか そんなことくらいしか浮かばないし わたしが彼の父親の愛人に瓜二つだったとしても そんな風に睨まれる筋合いはない そして愛人だっていない
時折 そのような視線を浴びる 何かやらかしたのか不安になるし 迷惑をかけていたなら申し訳ないけれど もし顔になにか付いていたら教えてほしいと思う
1020
破綻するはずの関係性を無理矢理維持し続けたら いつか強い絆が生まれるのか 皺寄せが来るのかわからない わたしは呪う あらゆる形式を重視した無感動な愛を 義務的に強制された望まれない愛を
尊び 妄信的に崇拝することのほうが清らかである矛盾 あるいは清らかさなど不要である