1282

きっとこの先もずっとボタンを掛け違えことに気づかないで すれ違って同じ線の上を生きていく 繋がらない会話の糸は細い絹糸のように繊細で 絡まりやすくて 千切れはしないのに どうして 模様を織り出さない

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窓を開けたまま眠ったら 風の冷たさに目が覚めた 週明けまた暑くなるらしいけど お盆を過ぎれば大抵は秋 熱がさめてゆく 潮時を知ってそれなりに傷つかない方法を覚えたのはどの夏だったか

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素敵なかたちの照明を見つけた 高さを調べたら大好きなあの人と同じだけあった わたしの部屋を照らし出してくれるだろう コードを繋ぎさえすれば ちいさな電球でも暖かい光を放つだろう 古びれない曲線の滑らかさを美しいの一言で終えるには惜しいけれど 他…

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みんな嵐の話をしてる それは本当のことだし たぶん来週もまたやってくる 十代のころ 暴動なんて思いもよらなかった そのくせパンクが好きだったなんてさ 色々試したけどすぐに飽きてしまう 世界を見てくるなんてビッグマウス叩いた割には波に乗り遅れたね …

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誰とでも寝ることを辞めたのは あなたを愛しているから あなたが存在している限り 他の誰の肉体を介してもあなたと交じり合うことはない それはかつてわたしが神の存在を あらゆる肉体を介して求めていたようにあなたがわたしを愛していない世界に わたした…

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遠い世界のひとからの贈り物が 近いひとを経由して届いたので なんとも不思議な日だった しかし誰でも血の通った人間なのだ慈善活動の参加を申し込むともう満員ですとの返事 それは何より どんな目的であれ参加者がいるのは悪いことじゃない 結局1日だけ行…

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目覚めてすぐに祈るための愛があるころはよかった 手に入らない幸せを願うだけで健やかな気持ちになれる気がしていたカーテンを開けると水色の空気が部屋に満ちるのはベランダの床を青く塗ったからだろうか 南向きの窓から風と朝の光がはいる ベッドから抜け…

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喫いかけの煙草をひとくち頂戴と言って加えたフィルターが やけに湿っていた夏休み ふたりともまだ背伸びばかりして大人じゃなかった頃 とりとめのない話ばかりして 今ではもう何も覚えていない そう 名前すら忘れてしまった 彼は それから色々あって 今では…

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帰らなかった子供の齢と 帰らなくなってからの時間がおあいこになって 次の夏からは遠ざかってゆくばかり 歳をとらない写真のなかの子 あの夏の日をまだ覚えていて 忘れることもないだろう 誰もが漠然と助かるに違いないと思っていたのに駄目だった 波打ち際…

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ちょっとした休暇がはじまるので浮かれていたら 今この時間が一番楽しいのかもね と言われて 確かに海で泳いだり 浴衣を着て祭りへ行ったり 麦茶を飲みながらゆっくり高校野球を観るのも楽しいけれど 期待することこそ幸福なのだというようなことを 高名な哲…

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それなりに取り繕うことを覚えたので へらへら笑いながら 海老みたいに後退りしていなくなることもやるし はなからいないことにもするあの人はいまとても困惑しているだろう どれくらいしんどいか知らないけど 眉間にしわを寄せて悩んでいる顔が好きなので …

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浮いたり 沈んたり 離れたり 近づいたり ほんとうはずっと手の中にいる 飼い殺しの庭に 実る果実は熟れて甘いもう別人になってしまった 暫く見ないうちにあなたを忘れてしまった 新しい手触りも好き オマエの犬になる

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あと3ヶ月もすればまた冬が来る 草木が枯れた野原に白い雪が積もる その頃わたしは何をしているのだろう 今年は新しいコートを買えるだろうか 髪は切る予定 うんと短くするのもいいかな 楽だろうね そう言えばヴィーナスってどこのシャンプー使ってたと思う…

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ほんのちょっとの力で人の心は簡単に壊せるし 壊された日のことを生涯忘れないだろう もう二度と笑いたくない 自分にどれだけの価値があると信じているのか 高慢に思い上がったまま 屑を生み出したことに生産性があると思っているなら本当に幸せなことだ芸術…

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透けた黄土色の長いテープに蝿がくっつくのを眺めていた あれは何年まえのことだっただろう 井戸のあるところはやたらぬかくさくて涼しくもなかったけど 時々思い出す

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あの村に親近感がわいたのは 故郷の町と似ていたからだと思う 郊外の田舎町 とてもちいさな村であるのは民家と自然だけ だけどとても居心地がいい すれ違う人は大抵顔見知りで 大抵お互いのことをよく知っている 家族の事情から洗濯物まで だけど口には出さ…

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確かにあのカントクの映画はわけわかんないし それが良いんだって言いながらくそつまんない薀蓄を披露しだす男と同じくらい退屈だし 正直二度と観ることもないって思うんだけど わたしたち二人とも彼の映画に出てきても違和感ないくらいイカレてるよね 主演…

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溶けそうなほど眠かった 歯科検診の予約を済ませる 痛むところはないので大丈夫だと思う結局のところ替えがないので あるものを大事にしなくてはならない まさかこれほど長く使うとは思わなかったけど 仕方ないものは仕方ない

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まだ幼かったころ 家のちかくの山が燃えた 大方登山客の煙草の不始末とか そんなことが原因だったと思うけど 理由がなんであれとにかく燃えてしまった まだ少し寒い時期で空気が乾いていたせいか 勢いよく斜面が赤く燃え上がってはいたけれど なぜか これ以…

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薄荷煙草は好きだったけど ミントのガムはどうしてもダメだった 食べられないことはないけど匂いがどうにも苦手で あれは本当のミントの匂いじゃない 薄荷煙草のそれが本物の薄荷入りだとはつゆほども思っていないけれど ガムのミントだって何で出来ているの…

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砂浜と海の狭間で波に揺られていたら なんだか死んでしまったような気がして 空と水の色が溶けて泡立ち入道雲になってゆくのが見えた 畑には向日葵が並んで咲いている うちの玄関に飾ってあるのと同じ八重咲きの黄色い小ぶりの花 100年以上前に有名な阿蘭陀…

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届いたばかりの本を読むのがなんだか惜しかったけれど やっぱり早く読みたくてページをめくると 10年前の友達がそこにいた ほんの少し年を取り 無精髭を生やしていたけれど 小綺麗な格好で 昔と変わらない様子だったのでとても嬉しかった 早くあの子にも知ら…

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教会のなかは静かでひんやりとしていた 足音とひそひそ声が不快ではない程度に聞こえるその空間を表現するには まさしく静謐という言葉が相応しかった 石造りの床 壁 天井 そして石像 今は誰も触れることが出来ないパイプオルガン 調律するひとがきっといる…

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好きな鳥は?と聞かれて フラミンゴと答えたら え?あ〜そういうの〜 と笑われたけど あんなにピンクで 長い脚で片脚立ちして 意外と嘴と眼光が鋭くてステキな鳥なのに どういう鳥と言えば満足したんだろう 食べるなら鶏とか冗談をとばしたらよかったかな 別…

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空の色が紫に燃えているのは 夏の青さと燃え上がる太陽が交じり合っているからなの 生まれたばかりの入道雲はすぐに大きくなり わんわんと泣き出す 大粒の雨に打たれた背の高い向日葵は風に吹かれて 折れて わたしの目線にまでその頭を垂れている 土に水が滲…

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海へゆくのが楽しいのは今からなのに 夜は少しずつ長くなる 花火行かへんかぁ と言うので ふざけて 舟から見せてくれんねたら行くわ と答えたら 舟ちゃう 電車や ○○橋すぎる時電車の窓から見るのがええねん と言われた 確かによく見えるだろう 早く帰って桃…

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あの街へ行く理由がなくなって久しい 彼はまた戻ってきたけれど 会いにいく理由はない ひとを愛することに根拠や理由が必要とは思わないけれど それでも衝動だけで走り出せた頃に出会えてよかった もう想い出でしかない 同じ時代 同じ世界で生きているとして…

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昨夜はクーラーをつけずに眠ったのだが 朝になると汗が滝のように流れ出し 布団のうえはずくずくに濡れていた まさか幼児のようにやらかしてしまったのかと思ったが 汗だった アラビアンナイトだってもう少し夜は涼しいだろう

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潔白ではない関係性を証明するための接吻 あなたがわたしを愛さないとき わたしはあなたを愛さないことは真か偽か 一度も心を込めた瞬間などなかったか 暗闇のなかで彼らは好きという 誰に向かって言っているの 不誠実な快楽を求めて でも純粋な欲望ってなに

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茹だるような昼を過ごしてなおも続く熱帯夜 あのひとの笑う顔を見て やっぱり 美しいと思った そして愛に溢れた日々が 果てしなく続けばいいと願った