Fiktion

1683

花が萎れて枯れてしまった 何が悪かったのか 多分あまり向いていないのだろう

1682

しなくてはいけないこと 行かなくてはならない場所 ぜんぶ死んだふりでやり過ごす 片付かない部屋の中で 本当に必要なものって何だっけ

1681

日記の捨て時 ここに書いてあることは作り話ばかりなので 何かの証拠にはならないし 思い出にもならないけれど スマホ画面を数回タップするだけで消すことが出来るので害がない 問題は毎晩こつこつ書き溜めている日記だ 天気 食べたもの 行った場所とその相…

1680

天気が良いのにひどく頭が痛む 副作用で頭が痛むことがある と言われたけれど 月に数回は頭痛でなにも出来ない日があるので 原因がわからず 結局対処療法しかない それでも天気が良いと幾らか気持ちがいい 晴れているのに何処へも行けないのは残念だけど ト…

1679

曼珠沙華が畦道を真っ赤に埋め尽くしている 人の世がどうなろうとも 季節は巡る

1678

なにもする気になれない

1677

久々の外出 初めて会う人 偶然会った人 それから旧知の人 少し疲労を感じたけれど楽しかった 帰宅後 床に寝転がったまま動けないので かなり疲れたのだと気づいた

1676

死んだ祖父がよく買い物をしていた生花店で 蘭の鉢植えを買った 剥き出しの根がポットからはみ出し ちいさな白い花が5輪ほどついている このまま家にある適当な鉢に入れたら良いのかと聞いたら あり物で良ければと レジ横に積んであった鉢から適当な大きさの…

1675

起きたらまた夜だった それは昨夜の続きなのか 一度朝は訪れていたのか よくわからないけれど とにかく夜だった

1674

少しずつ集めることの楽しさ 大切に使うことの喜び あなたは手がかかるもの 世話がかかる道具ばかり持っていると言われ なるほど 確かにそのとおりだと思った 靴を磨いたり コートの埃をブラシで払ったりすることの延長みたいな手入れ モノを言わない道具を…

1673

虫の音ばかり聴こえている 窓の外から見える草むらは雨に濡れて しっとりと青く 花は白い もう長いこと野良猫を見ていないことに気づいた 理由はいくつもあるだろうけれど わたしが飼うとしたら 絶対外には出したくない そしてその考えは猫の性質に反するので…

1672

取り寄せたカーテンのサンプル生地を窓に吊るしながら ドレープについて考えていたのだけど これまでドレープがあるカーテンを吊るしたことがないので 想像するのが難しかった 一体どのように暮らしていたのかと思うけれど 北国では窓の上に吊るすのは 星の…

1671

どこまでも広がる田園地帯 その奥に湖 風車が回っている その下を黒い鵞鳥が歩く 特急列車はほとんどすべての駅を通過して走る

1670

自動車でしか通ったことがない道を 歩くのはなんだか難しい 景色が変わるスピードが違うから こんなに歩いたのに まだ目的地まで半分も来ていないなんてことがある 弱ったな 本当にたどり着けるのかしら とテクテク歩いていたら 珍しく他にも歩いている人が…

1669

あの日のことは 実はあまりよく覚えていない たぶんニュースは夜に流れていて わたしはもう寝る支度を済ませていた 会社から帰ってきた父に 母が大きな声で知らせていた まだスマホがなかったときのことだ 翌月に兄が短期留学に参加することになっていたけれ…

1668

傘を持っていても ほとんど雨が降らないので 傘を持つのは嫌いだ ありがたいことに都合よく止むので ささずに済むのだけど 家から腕にかけるだけで重いし邪魔になる 今日も結局使わずじまいで晴れた 交差点で信号待をしていたら 隣にいた知らない男が 素敵な…

1667

夜中 雷雨で目が覚めた そのあと金縛り 申し訳なさそうに というか 遠慮がちに そっと身体の上に乗ってくるのはどういう了見なのか 疲れて寝た気がしない

1666

昼前にアイスクリームをもらったのに 冷凍庫へ片付けたまま 忘れてきてしまった 誰かに食べられていませんように

1665

もう二度と思い出さないように 忘れていいように わたしは記録する あのひとがくれた愛の言葉を 初めて名前を呼んでくれたときに感じた戸惑いと喜びを 何年も何十年も前からずっと一緒にいたように感じていたのに だんだんと笑顔が消えていった日々の苦しさ…

1664

雪が降る前に 冬が来る前に ニルゲンドヴォを旅立つ予定

1663

弱くなった陽射しが 東の空から降り注ぐ朝 背中に滑ってゆく風を感じて思い出すのは 北国の短い夏のことだ 夜の帳が下りきらないうちにまた日が昇る繰り返しで 永遠のように感じた日々 湖のほとりで わたしたち一家は余暇を楽しむことに専念していた 夏の家…

1662

ふだん話さない人と話すのは さして苦にならないけれど それが長時間になると 信じられないほど疲れる と いうことを忘れていた 避けていたから

1661

夏前に頼んだ向日葵模様のスカートがようやく届いた 少し枯れたような色味で 庭の花そのもののようだった 南方へ行ったひとは今も憶えているだろうか 大きな糸杉の絵のこと

1660

あの有名なスイートルームと同じ アイスブルーのカーテンをつけようと思っていたのに 風水的にはグリーンの方が良いらしい なんて ささやかなことで悩むのは楽しい でも薄い緑のカーテンは病院を ベージュだと教室を思い出してしまう かと言って花柄を選ぶほ…

1659

虫の音が聞こえてくる じきにそれも静かになり 暗くて寒い冬がくる 今年こそ暖かい地方へ逃れよう 春が来るころ 前と同じ世界に戻れたらいいのに

1658

ふいに思い出したマンションの名前を検索したら 不動産仲介業のサイトがヒットしたので 写真を見たら 部屋番号を見る前にわかった わたしが初めて入った男の人の部屋 家具がなくとも見覚えがあるキッチン 駅から徒歩5分 2LDKでひとつは洋室 もうひとつは和室…

1657

刈り取られた草木の青さ また伸びてくるみずみずしさ 同じような色に見えて ぜんぶ違う 蛇が出るから入ってはいけないと言われたっけ 虫がいなくても 葉っぱはよく切れる

1656

一度も泳ぎに行かなかった夏を弔うことも出来ない 陽射しだけがやけに強く 海は穏やかに広がり その道すがら こうべを垂れた向日葵の葬列 花火すらしなかった こどものころよく遊んだ花火 藁の先に黒い火薬がついた線香花火が 一番のお気に入りだったけれど …

1655

音楽が政治や金や権力にまみれているのは今に始まったことではないけれど わたしはそれにあんまり興味がない 同じ信条じゃなきゃ輪になって踊れない気がするから 焚き火を囲んでみんなで手拍子しながら一緒に歌うことすら拒否反応を示してしまう 権利を主張…

1654

ホテルのような部屋で暮らしたいので カーテンの色はヤコブセン・スイートと同じブルーグリーンで レースのカーテンにはウエイトチェーンを付けたい でもグレージュの一級遮光タイプにするかもしれない スワンチェアのひとつでもあれば良いのだけど スツール…