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ヴォトカ流れる河のほとりで

Das Tagebuch der Lily Mercury

Wirklichkeit

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わたしの胸の星は ベツレヘムへ流れてゆきましたので また元の永久凍土

280

星が見えないなら あかりを灯せば良いじゃない

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清き流れは海へ注ぐ その出ずるところや何処 碧い眼の船乗りは 港の無い街で 朝陽のような酒ばかり飲んでいた 浴びるように 鮮やかに

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もっと もっと深いところまで 埋められたら良いのに 痛みもないから わたしは泣く機会も無い

250

あなたと過ごした夏は 島で一番見晴らしの佳い高台へ 置いてきましたから どうか忘れないでまたいつか

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橙の花を集めなかった惰眠 また惰眠

230

夢もうつつも すべて光であり 闇であり 耳鳴りだけがいつまでも残っているのだ

220

その流れ どんなに激しくとも 清らかであれ

210

過ぎ去った季節も 日々も 惜しむばかりではいけない

200

世界の果てを流れる河は夏になれば枯れてしまうので渡し守は薔薇の咲く谷へ避暑に出掛けているどれだけ激しい風が吹いてもどれだけ強い陽射しが降り注いでも寝惚けた蠍に気をつけていれば砂漠の楽園は絶対に安全足の甲に描かれた花の名前を教えてはもらえな…

190

人の心も 季節も やがて移ろいでゆくものだけれど せめて百日紅が散るまでは この恋が燃え続けますように

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ソリッドに生きたいと君はいうけれど 近いうち暴動は終わるし もう厚底靴で走れないなら 創りだせよ あたらしい地図 君のためだけにさ

170

轟く 今世の終わりにいいえ それは過ぎ去ってゆく日々を祝福しながら見送るための儀式

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海沿いの土産物屋で 波の音が聴こえるという貝殻が ひとつ300円で売られていた 耳に充てると 貝殻のなかを 空気が抜ける音がして 確かにそれは波の音に似ていたけれど 海の音ではなかったソニック・ユースを聴いたのは むかし好きだったひとが 聴くとよく眠…

150

その音色 力強く町中に 鳴り響く

140

低気圧で鬱屈とした薄暗い部屋の中で神経が圧迫され物音ひとつにも過敏になっているのが疎ましい 作りものの平和ですら涙が出そうになるし 煙った電子音が愛しくて堪らない もう眠ろう

130

肋骨の奥がやけにひりひりと痛んで 目頭が熱くなるこの感覚にいつまでも慣れないのは今でもあなたを愛しているからなのかいや 愛したことなど 一度もなかったのだけれど

120

千代に八千代に君を愛す

110

耽美であることの定義に背徳があるとして 高校時代 倫理の授業を受けなかった私は 美を追求する上で 罪になることが何かわからない そもそも 幸福は青空の下にしか無いというのが 信念だから 太陽に背くこと自体が出来ないのだった

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初めてRと一緒に海水浴へ行ったとき 彼女はまだ15歳で しなやかな筋肉のついた肢体を陽光のもとに曝け出し 瑞々しい肌は 砂の上で一層白く 美しかった 私もいつか 彼女のように成長していくのだろうと 信じて疑わなかったのに その次の夏 病に冒されたRは帰…

90

雛罌粟の名を冠したマニキュアを塗った夜 緑輝く山奥にある修道院を夢に見た 私は黒い服を着た孤児で お父様が馬車に乗って迎えに来て下さるのを待っているけれど 本当は皆んな散り散りになってしまったのを知っているのだ 麓で戦争が起こるたびに村の男たち…

80

手芸店で瓶に入った硝子のビーズや色とりどりの刺繍糸を選ぶ時のような気持ちで 生花店で花を一本ずつ選び 束ねてセロファンに包み リボンをかけてもらうという 愉しみ 真っ赤な薔薇100本も素敵だけど あなたのことを考えながら選んだ花はぜんぶ あなたのよ…

70

濁りゆく部屋の窓はもう錆びついて開かないそれがどうしたというの

60

壊れそうな程愛していたはずだった 事実壊れた 壊されてしまった わたしの尋常 平穏な日常 安定した情緒 損なわれて救いを求めた先に 神も仏も無かった 壊れてしまった人格で 何を祈れば良かったというのか いいえ なにも 誰も愛してなどいなかった 欲しかっ…

50

子供の頃 バスに乗って鉱山へ行き鉱石採集をしたことがある かつては銅が採掘されていた山で 50年前に閉鎖された今では僅かに面影が残るばかりだ青草の茂みを掻き分け 転ばないように気をつけて小岩が転がる斜面に辿り着くと 我々一行はそこに屈み込み ショ…

40

あなたのことたぶん愛してた 神様と同じくらい もう戻れない時間は 失われたわけではなかったのだけど あまりに多くの傷が増えすぎた身体では 求めることすら儘ならなくて

30

花と果物だけはいつもうちにあった 今もそうだ 新しい電化製品や 流行の服は無くても 玄関にはささやかな花が飾られ 台所の机には林檎や洋梨やら何かしらの果物が欠かされることはない ほんの少しの贅沢去年の秋に買った球根はようやく花を咲かせてくれた 濃…

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革命兵士による沈黙のプロパガンダ