1001

その日の朝 わたしは心の底から安堵していた もうあのろくでなしのクラブに入るための伝説をつくる必要が無くなったこと 仲間入り出来る資格を失ったこと ずっと聴こえていたジムノペディがぼやけたようなメロディは高い金属音に変わった 耳鳴りがするようになったのだ (これは治るのに一週間かかった)

 

彼とはもう一生会うことがないだろうと思っていたので その一年後に再び口付けを交わし 祝福を与えてくれるなど予想だにしなかったのだが 実際わたしたちはふたりともKの年齢を越えて尚も生き続けている 夭折した詩人すべてが神話になれない時代において 正しい判断をしたと思う なにせ可能性だけはあるのだ 死人に口なし 遺された言葉を拾う者がいるかどうかなど知る由もない いや自らの知らぬところでその功績あるいは功罪を評価されることを良しとすべきではなかろう

 

雪のなかでも河は流れ 木々は春 芽吹く

しぶとく生きろよ