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齢をとるにつれ、繊細さが失われてゆくのは残念ではあるけれど、私の心はバカラ製でないから傷はやがて癒えてゆく. その傷が再び抉られそうになり泣きかけた時に、あっさりとナイフを払い除けてくれた人がいてくれたのは救いだった.  長く生きてりゃたまには佳いこともあるやね、とよく口にするが、本当に、細やかなその言葉は柔らかいガーゼのように感じられたのだった.