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シェパードを連れた女と

いつか秋の暮れだか

或いは冬の終わりだったのか
花の咲いていない桜並木を歩いた

時期になればこの川沿いは
とても美しい桃色の霞でいっぱいになると
少し酔った女は嬉しそうに話した

僕はこの街へ来て
もう何年も経つけれど
桜は見たことが無いと言った
人混みを歩くのが嫌で
なんとなく避けていたのだ

花が咲いたら佳い人と
一緒に見に行きなさいよと
彼女は微笑んだけれど
あなたと来たいです
ということが
最後まで言えないまま
立ち別れて
もう何年も経つ

今でも何処かの街角を
シェパードと歩いているのだろうか

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