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週末、あの人が生まれた街へ行き、胸に穴を開ける予定. 彼がその地を去っても私の心に穴は開かなかった. 姿を消して初めて彼は私のなかで大きな存在になり、無条件に愛せる対象となった. そしてまた概念となった彼は私と肉体的に交わらなくとも、新鮮な朝の空気となり、呼吸をした身体のなかかな血管を巡り髪の毛から爪先に至るまで満たした. 神様の光ように. 
あの人の顔を思い出せない今、夢の中では透明になってしまったから、開けた胸の穴には透き通る硝子を埋めよう.