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旅行者の部屋は 何時でも旅立つ準備が整えられている 直ぐにでも


旅するように生きてゆきたいと 言った私に うっとりしながら 素敵だと言った君との間にある マリアナ海溝のように深い 理想の違いが いずれふたりを別つことは 火を見るよりも明らかだった つまり私は上質な革のトランクに最低2足のハイヒールとシルクのドレス それに黒いビキニを入れて 必ずそれらを活用出来る場が必要なのだけれど 君にはそれが理解出来なかった


安宿で舐める密造酒ではなくて 銀色のカクテルピンが刺さったオリーブの入ったマティーニが飲みたい