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生けたい花が無くて造花を硝子瓶にさしている 花屋の店先にある花が気に入らなくて どれも これも 駄目で 早く庭の薔薇が咲けば佳いのに



花壇の草をむしる 雨上がりの地面は緩み するすると抜けて楽しいので 私は爪に泥が入るのも厭わず夢中で草をひく 何年か前 働けなくなって家にいた時も 日に一度は外の空気を吸うという言いつけを忠実に守り とはいえすることもないので 草ばかりむしっていたのだった 団子虫は食べなかった 口の中でもげた足が歯に挟まるのは御免だったから