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結婚が全てではないとはいえ ろくすっぽ働くことだって出来ない処女の私が孕むのは 不安と絶望だけで ひとりで生み落とすたびに 血に塗れた子供たちが刃物を振り回すから 私の腕は傷だらけなのです 赤いのは死んだ細胞ではなく まだ生きている細胞です 排水孔に流れた胃液が悪阻によるものでないことが明らかなのは 或る意味救いです 誰も私を愛さない 私は誰も愛せない お母さん どうして人間は 細胞分裂して殖えられないのでしょうか 私はもう光合成だけで 生きられたら良いのに

醜い私は何にもなれないし
お母さんになることもないのです