2015-09-05 203 Fiktion その道は 以前 彼女と歩いた道だった 暗がりのなかで 提灯の明るさが 朧げに彼女の左頬を照らし 幻のようだった 夏の夜 雨上がりの道 昼間の住宅街は閑散とし 犬の鳴き声と 自動車の排気音がやけに煩く聞こえる 気怠さ 茶色く萎んだ百日紅を横目に 行くあてもなく 私は足を進める