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眩暈がこわいのは ふいに身体の動きが儘ならなくなること 視界が暗くなること そしてどれだけ続くのかわからないことだ 息を殺すような動悸 指先に触れる流水を とても鋭く感じる

僕は長くても20歳まで生きられないと ずっと思っていた 従兄弟と同じ 15歳で死ぬと信じていたのに それからも死ななかった 殺されることもなかった けれど いつ死んでもおかしくないと思うし 日々のなかで死を想わずに過ごすということは 神さまがいないということくらい 考えられないことなのだ もう いつ死ぬかわからない という人を死ぬ死ぬ詐欺と嘲るのは 酷い 誰だって いつ死ぬかはわからない 生きていたら儲けものだと 最期だから ではなく もっと他の感情を優先させてほしい 僕はできる限り君の もう死ぬかもしれない に応じたい

真っ暗になった視界のなかで 僕は君の姿を探す 目蓋の下で 眩しさを 探す