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90年代 あの頃ロッキンホース・バレリーナはゴスロリ少女たちの憧れだった インターネットは手軽なものではなく 通販もない 当然お金もない 田舎の中学生にはその存在すら雑誌やテレビのなかでしかお眼にかかれないものであったので 手に入れることが出来る少女とは 都会に暮らしている または都市部にある Vivienne Westwood の店舗へ買いに行けるお嬢さんだけだった それも成長期の子供の脚にいかにも悪そうな靴の為に大金を支払うことを厭わないスポンサー或いはパトロンが必要だったのだ そのような少女たちは 実際ほとんどいなかった つまるところ レッドソールがChristian Louboutinの代名詞であったように 今やほとんどが紛い物なのだが かつて ラバーソールは George Cox のものであり 8ホールは Dr.Martensのものであった 合皮のリボンを足首に巻き付けてかたかた歩く少女たち 若さのなかにいることに まだ気付いていない 儚き美しさを讃える少女たち 本物のロッキンホース・バレリーナを履かなくたって 踊ることは出来るけれど