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会社帰りに本屋へ寄り クリスマスにあげる最初の贈り物を探すべく 児童書のコーナーへ向かった 大きな本はつるつるした きれいなカバーがつけられているし 小さな本はぷぅぷぅ音がしたり ふわふわした布がついていてたのしいけれど 早く字が読めるようになれば良いのにとも思う 本の世界がどれほどステキなところであるか知ってほしい 幻想と現実の世界を自由に行き来することが出来るようになってほしい などと思いながら クリスマス絵本特設コーナーに平積みされた『ノンタン!サンタクロースだよ』を手に取った

ノンタン!サンタクロースだよ (ノンタンあそぼうよ (7))

ノンタン!サンタクロースだよ (ノンタンあそぼうよ (7))

 

しかし どんなにノンタンが愛らしくても この本を楽しめと生後一ヶ月にも満たぬ子にいうのは酷だ それどころか この本のノンタンはなかなか気の毒な目にあうので 立ち読みしながら泣いてしまった いじらしいノンタン!これは来年に贈ろう

 

そういうわけで『ノンタン にんにん にこにこ(赤ちゃん版ノンタン)』を買った かわいい

 

その後 普段は雑誌と岩波文庫コーナーにしか行かないが ふと引き寄せられるがままに歩いていて 眼にとまった書籍があった

東大駒場寮物語

東大駒場寮物語

 

西で暮らす身には 駒場寮よりも 吉田寮のほうが物理的には近いが どちらも訪れたことはない かつてそこで青春時代を過ごした友人がいたということだけだ ゆえに彼女の名を見つけたのは 思いもよらぬことではなかった しかし わたしは 思いがけず 友人の生前の姿を作中で垣間見て そして「若くして亡くなった」という事実を 改めて知らされたのだった

わたしは声をあげずに泣いた つもりだったが 喉の奥から引き笑いのような 奇妙な音が出た 彼女がわたしの名前を呼んで握ってくれた手の温かさや 柔らかさを今でも覚えているからというだけで ほんとうはまだ生きてるような気がしている