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泳げない君が口から泡を出しながら 手足を無茶苦茶に動かして もがいているのを わたしは川の底から眺める 太陽の光が さざ波でちりちりと流れ まるで黄金色の魚の群れのように見えるのに 気付いただろうか 穏やかな流れほど 深い 河の水は 冷たく 君の体温を奪ってゆく 緩やかに

 
水槽に映った わたしたちの顔は苔色 すなわちコーヒーカップのなかでは セピア色になる せいじゃくなる喫茶室にて 一体何千文字 囁きあったのだろうか ぼろぼろになった背鰭のベタが 浮いたり沈んだりして モーター音だけが辺りに広がってゆく
 
次第に暮れてゆく夕陽をわたしはひとりで たったひとりで 見届けた どこかで朝が訪れているという事実だけが 愛しかった

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