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ヴォトカ流れる河のほとりで

Das Tagebuch der Lily Mercury

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生まれてから今まで 一体何足の靴を買い どれだけの距離を歩いたのだろう ビニル製のガラスの靴 厚底のスニーカー 赤いつま先のバレエシューズ 白い指定運動靴 編上げの素敵なブーツ ハルタのローファー 桃色のデッキシューズ よく蹴つまずいたメリージェーン 縮緬の鼻緒をすげてもらった高下駄 エナメルのパンプス 猫足のメリッサ クロコダイルのハイヒール ビルケンシュトックのサンダル コンバースのハイカット 数えきれないことはないだろう 時間はかかったとしても 思い出せるだろう 答えはわからないけれど わたしは自分で選んだどの靴も好きだった 靴擦れて 水膨れが出来ても 靴の中が血で赤くなっても ハイヒールを履くことを辞めなかったし たくさん歩くことも辞めなかった

休日 靴を洗ったり 磨いたり 手入れをして次の季節がくるまで 新聞紙や乾燥剤を詰めて 箱に片付けるのも好きだし 靴の修理屋さんの店先でスリッパを履きながらぼんやり 踵を直してもらうのを眺めるのも好きだ 新しく手に入れた靴の踵にキスをする 靴のために働くわたしと 履き倒される靴の どちらが奴隷でもかまわない 大事なのはどれだけ一緒に長く歩けるかということ わたしが選んだ大切な靴と どこまで行けるかということ
 
舶来の靴はイギリス製で 14歳のときから何度も夢に見た木の底 サイズが合わなかったらと不安だったけれど シンデレラのようにぴったり履けたという偶然 王子様なんていないから舞踏会へ行かないのに ひとりでも踊り出せる ロッキンホース・バレリーナ

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