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黄色の線を越えると 線路に転落したり 列車と接触したりするおそれがありますので お見送りの方は 線の内側にて 座らずに ご起立下さい

そう 真っ直ぐに 踵をきちりとつけて
敬礼
 
 
わたしは港へ戻ります 白い波飛沫を立てて 海原を進む船に向かって 手を振ります ここらは穏やかな気候で知られているので 大抵は傘要らず 年中 夏のような空です わたしは港で雨の街を思います 傘屋の娘を夢に見ます あの映画は とても鮮やかだったけれど どの色にもほんの少し 黒い絵の具が混じっていた 柔らかな金髪にすらも ここらはなにもかもが眩しい 灯りのない夜でさえも
 
 
黄色の線の内側にお下がりください ここは港ではありませんから 平坦な土地が続きます 見渡す限りの穀倉地帯を御覧になったことはありますか わたしは傘を持っていませんが 時には降るらしいです 流れる星の線に似た雨が ここらの眩しさを一層際立てるというのです


列車の座席や網棚に お忘れもののなきよう どうぞお気をつけください 夜の絵の具が塗りこめてしまいますよ 吐く息の白さまでも
 
 
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