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流れていったはずの音楽の渦に飲まれたまま三月は去る 眼を閉じれば広がるのは 海ではなく森だった 樹々の間を揺れる木漏れ日と 舞台の照明は 時々似ているので いつだったか 鹿毛の馬に乗り 駈歩で森を走った夏のことを思い出した

他者としか得られない快楽も ひとりで味うことのできる快感の どちらも好きだし わたしにとっては 必要なことなのだ 佳き時間や 空間を共有し 互いに満足出来るに越したことはない ほんとうに嬉しい夜だった

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