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きみの存在 もうとうに実在していない きみの生きていた証 遺灰ですら 風に吹かれてしまった きみの せめて感覚だけは ずっと覚えていられるはずだったのに 今ではほとんど 感じられなくなってしまった 春の湿り気を帯びた午後に わたしは記憶を失ってゆく 書き溜めていた言葉は 暖炉の燃料になり すべて忘れられてゆく 遠くで機関車の汽笛が吹鳴し 雲雀は一斉に飛び立った


だれも いなかったんだ

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