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雛罌粟の名を冠したヴェルニを買ったのは もう既に一年前のことになるのか この春 店先に並べられたのは ジタンヌの赤だった

なんと蠱惑的な色なのだろう! 炎よりも熱く 野生動物のように自由で獰猛 烈しい想いで身を焦がすことを 愛と呼ぶと 今なら信じられる そう思わせるような 美しい色だった

一番のお気に入りは 血豆色ではなく 鮮血色で それは白い紙に落とすと ラッカーの滑りもあって ほんとうに血のように見える みなぎる生命力が 噴き出すかのようで とてもきれいなのだ