Subscribed unsubscribe Subscribe Subscribe

ヴォトカ流れる河のほとりで

Das Tagebuch der Lily Mercury

470

生花店の薔薇は 棘を抜かれて なす術もなく愛でられる 生まれながらにして 棘など無かったかのように 硝子瓶のなかで佇んでいるだけ


南向きの部屋は明るく 大きな窓から見えるのは 旧い街並と その向こうに海 坂道を真っ直ぐ降れば夏がある 水兵の描かれた小袋に入った粉を水に溶かせば いつだって甘い炭酸水がつくれるように 眼を閉じれば あなたがいた最期の浜辺を想い出すことが出来る

魂が抜けた肉体は焼かれて骨と灰になった 棘のある野生の薔薇は ー正確には野生ではなく 元は誰かに育てられていたのだがー 日光と雨を存分に浴びて ぐんぐんと枝葉を広げた 主人のいなくなった廃屋で なおも美しいのは 生きることだけに 専念しているからなのか
あなたの骨を愛でる 病に立ち向かうも 果無く散った肉体の 艶やかさ しなやかさを思い出しながら

f:id:mrcr:20160529153207j:plain

Remove all ads