475

傘が無い夕暮れを 濡らしてゆく豪雨 じきに止んで 通りの電飾は色とりどりに点滅し 女も男も 小さな椅子に腰掛けて 大きな声で叫ぶように話している 香草と埃の匂い 大八車を引いた皺だらけの女が わたしの手をとり 蜜柑を握らせたので 金を支払おうとすると 笑って手を振り行ってしまった 薄い皮をめくり ちいさな房を口にすると 甘い果汁が溢れ出した 熱帯の夜は まだはじまったばかり