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ヴォトカ流れる河のほとりで

Das Tagebuch der Lily Mercury

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マトカは料理をしないひとだった いつも寝てばかりいたので バプチャのつくる 茸のスープと玉ねぎのスープを 毎日交互に食べた 木曜日は豆のスープだった 歯の悪いバプチャは 豆が崩れるほど よく煮込んで 味付けはどれも同じだった 靴のような固いパンをそれに浸して 柔らかくしてから食べるのは 悪くなかった
安息日には肉を食べることもあった 赤ワインで何時間も煮込まれ なんとか形を保っていられるほど柔らかだった バプチャもマトカも ヴォトカをよく飲んだので わたしは肉を食べる日には その空き瓶に 森で摘んできた花を差し テーブルを飾ったものだ

マトカは花柄のカーテンの吊るされた部屋の隅に置かれた 木の寝台で眠り 女3人でどのように生計を立てていたのか 幼かったわたしが知る由もなかった 今だって知らない 覚えているのはカーテンの柄がグラジオラスであったことだけ

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