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まだわたしたちが 溢れんばかりの夢に 見惚れ 迷っていたころ 若いということを知ってはいたものの その魅力に気付いてはいなかったころ 軽々しく 消耗されていった日々のことを 真夜中に思い出す 愛なんか無かった まだ 畜生のほうがましだった

銀座にある高級な喫茶室で 一杯千円の珈琲を飲ませてもらうことを喜んでいた彼女の まだ18歳だった彼女の清らかな肉体の価値とは 一体何だったのだろう あまりにも安すぎた 愛だと思い込むことにした彼女は 春をひさぐことなく 結局のところ 珈琲数杯で 純潔を失った わたしは彼女がふしあわせだとは言わない 恐らく その時が 若さと美しさを持て余していた時が 彼女がもっとも笑顔でいられたときであったから 甘い言葉で酔わされていた彼女は 確かにしあわせだったと
でも なんて非道いんだろう
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