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この街はもう時間が止まったまま 波だけが行ったり来たりしているので 坂道を転がっていったのは16歳のわたしだった 誰もいない大きな交差点で信号が青になるのを待ってから 駅のほうへ向かう 参考書と教科書でいっぱいの鞄を背負いながら 西陽はうんざりする 可愛いあの子は野球部の主将が漕ぐ自転車の後ろで 気持ちよさそうに風を感じていて ああ それは禁じられているのに 生徒指導の先生に見つかって叱られたらいいのに 誰もいない ここはもう時間が止まってしまったから