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ヴォトカ流れる河のほとりで

Das Tagebuch der Lily Mercury

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殴られるときは奥歯を噛み締めておかなければいけない 口の中で切れてしまうから しっかりと歯を食いしばっておかなければ しかし同時に 声をあげて快楽に悦ぶことも必要なのだ 堪えるばかりでは飽きられてしまう 肌が裂けて血が流れることを恐れてはいけない 彼らのふるう暴力とは 歪んだ愛のかたちであるから 愛しているなら 愛してほしいなら 決して拒んではいけない その証拠に彼らは傷あとに口付け 噛みつき 肉を抉ろうとさえする ことを 望んで
望んでいたのは苦痛ではなかったのになぜ


かつてはそのようにされることでしか 愛されないと思っていたし 生きていることも実感出来なかった 痛みだけが 現実的な感覚として触れることが出来る感情だった (それは今も変わらないかもしれないが) もっとも身近な感情としての孤独さえ 触れることは出来ないから 生きているのか 死んでいるのか もう わからなかった 腕を切れば 確かに血が流れたけれど 何にもならなかった 暗闇のなかで目が冴えて そこには ほんとうに何もないことがわかった時のように

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