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新しいスケッチブックの表紙を開き 真っ白い画用紙に向き合うこと それは4月のように憂鬱で しかし期待に溢れている このまま閉じて紐をくくり 棚に戻したっていい 出たくない授業ではないから大丈夫 気が向いたときにやればいい 色鉛筆は使い古されてはいるけれども 削りたてで芯は尖がっている 消しゴムは失くしてしまった あるいは探せば何処かに落ちているかもしれないし 引出しの奥で溶けてくっついているのかもしれない そうやって何度かページをめくって めくって めくって 汚れも落書きのひとつもないことを点検してから やっぱり閉じる 4月は永遠に始まらない ずっと3月31日のままだ

 

わたしはカレンダーを破り捨てる 6Bの鉛筆で真黒に塗りつぶす 4月を 5月を 6月を 塗り潰してゆく 月曜日も火曜日も水曜日もみんな 手が汚れるのも厭わずに消してゆく 黒の中に そうしてから もう一度 スケッチブックをめくった途端に あの白いページが スノッブなほどに白いページが汚れてしまって わたしはそこからなんとなく 黒い翼を描き 鳥のかたちに塗った 誰にも見せなくたっていい 4月が始まらなくても 別にどうということはないんだ

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