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酔うても 酔うても まだ呑み足りぬ 

 

蠍座の男の子と恋をしたのは どの夏だったのだろう テキーラのように刺激的で 太陽のように燃える情熱で溢れていた 不死身の少年は海も砂漠も越えて あちらこちらに口付けを残して次の街へゆく 陽に灼けた肌が白さを取り戻したころに 行方を眩ませてそれきりになったのは仕方のないことだった どの男も女も真実を知らないまま 想い出話に涙を流すうちに 彼は神話になった それは絵画よりも美しく 花よりも気高い

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