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ヴォトカ流れる河のほとりで

Das Tagebuch der Lily Mercury

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あなたと最後に身体を重ねた日から 何度月の満ち欠けが繰り返されたのでしょう わたしの身体は確実に変化を遂げ 日々のささやかな出来事にも 涙をこぼしたり 微笑んだりしています 出血の苦痛と引き換えに得た苦しさというのはしかし 喜びに溢れているように思います かつて世の中じゅうのあらゆる悲哀を一身に引き受けたような気持で これから起こり得るすべての不幸を 誰ひとりとして与えたくはない 悲劇を繰り返すべきではないと わたしで終わりにしようと思っていました けれど あなたと出会って初めてその考えは消え つまり 自分自身の複製をつくるのではなく あなたの遺伝子を遺したい 単体で繁殖できない生物として あなたの遺伝子を殖やすための器になりたいと願ったのです わたしは わたしではなく あなたのための器になりたいと

 

月が満たされようと 欠けようと一向に構わない 膨らんでゆく腹部を撫ぜながら もういないあなたのことを想います しなやかな筋肉を 柔らかい巻き毛を 囁くように話すあなたの唇を 固く勃起した性器が熱く潤んだ内臓へ入り込み あのまま擦り切れて消えてしまったってよかった けれど白濁した粘液がわたしの器を満たしたとき 初めて 精神的に満ち足りたと確信したのです そしてあなたがいなくとも この子宮に遺伝子がのこされたことを 何より幸運に思います

 

 

クリスマスの7日まえ わたしは わたしだけの天国であなたを愛し続けます

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