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森と湖の近くで育った
ずっとまえ 田舎が嫌で 大都会を見ようとしたはずが なぜか森と湖の近くへゆくことになった 走っても走っても白樺と湖沼地帯 夜がない夏の国 寂しくはなかった 自然のなかで暮らすことは幸せなことだったから

暮らしのなかでわたしは 蝋燭に火を灯すこと 甘いパンを焼くこと 樹々を飾ること 質素であるが清潔に慎ましく過ごし 祝祭や余暇ときには楽しむことなどを学んだ そして すべての物事には理由があるということも

2000年の夏 死んだも同然だった あらゆる思考について他者と分かち合えることはないが 対話による可能性は無限だ 共有不可を前提にした過去ですら 解釈次第では共通の未来をつくりだす
かもしれない

湖は森と空を映し出し さざ波は光を躍らせる 森は湖を守り空を讃え 木漏れ日は安寧の象徴であった わたしはきっと 都会へ ゆけない
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