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白っぽいぺたぺたした水気の多い雪 濡れるから嫌だなぁと足早に石畳を歩き 門扉を開けると 先生が男の人と何やら話していた
挨拶を交わすやいなや これは霙というの? と 先生が尋ねるので はい霙です と答えると ふぅん と彼女は眼を丸くし 男の人はほらね といった顔で わたしはその瞬間 本当にそれが霙なのだろうかと自分を疑う 霙の定義なんか知らないのに どうして霙だと思ったのだろう? そもそも誰に教えられたのだろう?
だけどこの白っぽいぺたぺたした水気の多い雪は霙だ 気象学者がなんと呼ぶかは知らないけれど わたしが生まれ育った街で暮らす人々が 降る雪を見て 積もる雪と積もらない雪を自然と見分けられるように ここらでそのように呼ばれていることは確かで 明らかなことだった 石畳を濡らしては消えてゆく霙は今夜にも雪に変わるだろう