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ヴォトカ流れる河のほとりで

Das Tagebuch der Lily Mercury

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尼僧の顔や全身を覆うベールというのか 黒い柔らかな布の衣装 それは慎み深く敬虔な色をしている 彼女はまだ若い とても若いが何処か諦めたような 憂いが漂う表情をしている 色素の薄い肌は瑞々しく 瞳はやはり薄い鳶色で いや 蒼色だったかもしれない 鼻のあたりに雀斑 薄くてちいさな唇が声を発するたびに 言葉が聖堂に響き渡った まるでパイプオルガンの音色のように美しく 厳かに

 

台の上でわたしは仰向けになり 頭を祭壇のほうへやり 手は胸のうえで組んで じっとしている 若い尼僧が銀色の盆の上に白い布を置いたのを運んでくる 布に包まれているのは鉄製の大きな鋏だ 彼女はわたしの額に水を垂らし (それは清らかで冷たい) 祈りの言葉を幾つか口にした わたしは眼を閉じ 唇を結んでじっとしている 若い尼僧が鋏を手に取り 刃先を開く金属的な音が聞こえると 次の瞬間 わたしの長い髪は切り落とされて盆の上に束になって落ちた 鏡に向かい肩の上で切り揃えられた髪は 跳ねた毛先が気になったが ベールを被るとなにも気にならなかった

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