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わたしの知らない世界 マティーニグラスのなかで水浴びをして スワロフスキーのシャンデリアの下で身につけるのは化繊じゃない本物のシルクだけ パーティは人目につかない地下ではなく 夜景が見える高層ビルの最上階で行われていて 何人もの女たちが薄くて軽い生地のドレープを揺らしながら真っ赤なルージュで微笑んでいる 張りぼてだらけの調度品で飾られたブティックに飾られた 誰でも細く見える鏡が 水銀みたいに歪んだ一瞬に飛び込めば辿り着ける世界 時計の針は23:59:00と23:59:59の間を行ったり来たりし続けて魔法が解けることはない なんて孤独なんだろう