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ヴォトカ流れる河のほとりで

Das Tagebuch der Lily Mercury

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黄色い砂はまだ若い砂

赤い砂は眩暈を起こして 黒い砂は眠っている

 

身体を動かすのがつらいが 遠くで鐘の音がなり合唱が始まった 祈祷の言葉を唱えているのだが 言葉がわからない自分には歌のように聴こえる 通訳をしてくれた娘によると 何千年も昔に高名な詩人が編纂した平和を祈る詩歌を唱えているそうだ かつてここいらは緑が溢れる美しい街だったと娘は言った 建物は土ではなく大理石でつくられ 遥か北方にある山から流れる冷たい水はとても清らかで 人々の暮らしそのものであったと 今では川は干上がり 深く掘ったはずの井戸も枯れてしまった 心が渇いたのと 街が乾いたのと どちらが先かなど問題ではないけれど と娘は前置きしてから いつか砂が眠ってしまえばいいのだけどと言った 眠った砂は黒くなり どろどろにふやけて土になるというのだ 娘はサボテンの棘を折り そこから零れ出した水を器にあつめながら祈祷の言葉を歌った

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