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いまではもう踊りかたをすっかり忘れてしまった テキーラの焼けるような熱い甘さとか 革張りのソファの柔らかさとか どのようにして過ごしたんだろう いつかの夏 N市のクラブで 屈強な身体付きをした海兵隊の男や 陽に焼けた肌が美しい若い女たちと一緒に明け方まで踊り続けて なにが というわけでもないけれど とにかく楽しかった 心が感傷で痛む速度を通り越して ミラーボールは煌めきながら回る 真夜中の太陽のように

 

長い黒髪に白い花を飾った娘とは ごく自然に惹かれあい 口付けを交わした ダンスフロアで身体を寄せ合い とても原始的な方法で欲望のままに求めあったことを いつまでも憶えていたい 美しいものを純粋に愛でること 第三者の常識に囚われぬこと ひと夜限りの夢は短い 

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