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夏の弔いに似た残暑の陽射しが照り続くけれど 終わりの日は近いので もう綿の木は育たずに 枯れてその実を爆ぜさせるだけ

 

いまから10年以上まえのことになるが 私たち家族が夏中乗り回していたボートは 「キイロ4号」という名前がついていた 隣に住んでいた老夫婦から譲り受けた小さいけれど ちゃんと動くモーターがついたすてきな小舟で 湖のなかに浮かぶ島から島 また島へと 走りまわり 水平線の端で空を燃やす太陽が やがて少しずつ沈んでいくのに気づかないようにしていた