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半練りの化粧品は金属的な光り方がまるで鯖の鱗のように鈍く光っていた 店員は早く帰りたそうな顔をしながら それが最旬流行色だという 冗談でしょう それは90年代の色味 サイエンス アンド フィクション あるいは サイケデリック フューチャー だけどやって来なかった未来のこと だってまだわたしの身体はリチウム電池で動かないし 転校生は宇宙人じゃなくてただの不良だった 彼女のことは一度花火大会の日に露店で焼きそばを売っているのを見かけたきり知らない とても綺麗な子だったけれど ああ そんな色を顔に塗るなんてどうかしてると思った 本当にどうかしている