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牡蠣を買った ケルキパの海で採れたらしい どれも丸々と肥っている 今夜は魚にしようか肉にしようかと眺めていたら鮮魚店の女が焼いて半分に切ったのを食べさせてくれた 磯の香りと牡蠣特有のまろやかな味わいがひろがり 朝陽が昇るケルキパの穏やかな海が眼に浮かぶようだった 女曰く ちょうどいい時期に収穫したのを とっとと蒸して冷凍したのを出してきているそうだ 昔では考えられなかったことだろう 技術の進歩は日々目覚ましい わたしはその牡蠣を 昔ながらの方法で蒸して食べた 蒸し器を入れた鍋の底には ケルキパの海岸に似た香りがする白濁した水が残った

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