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労働のあとで買い物へ行った 千円のインナーと一万円のインナーが同じビルの中で売られているのは単にそれだけ色んな人が来るからなのだけど わたしはかなり場違いな格好をしていた つまり ぼろぼろのコートを着て 壊れた靴を履いて ふかふかの絨毯のうえを歩いたのだ! まるで悪いことをしているようだった 実際古いだけで 傷んでいるだけで 汚れているわけでもないのに 酷い悪戯をしているようで妙にわくわくした

肥った金髪の女は とんでもなく派手なピンクのファーコートを試着しながら こないだ買ったブルーと色違いで欲しいのよねぇと 金縁の大きな鏡の前でポーズを取っていた 何処へ着ていくのか見当もつかないが きっと彼女の暮らす世界には必要なのだろう 原価のことを考えてはいけない H&Mで似たようなのが100分の1の値段で買えるとしても それぞれの暮らしがあるのだから

 

会釈をして彼女の縄張りを抜けると 店員は慇懃に「ありがとうございました」と言った それからスーパーに寄り 半額になったコロッケを買った

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