1033

誰かがその女を探しているらしい 構内放送で繰り返される名前 とても珍しい苗字と (もちろん発声されるときに漢字がなんであれ問題ないのだが) 初見では正しく読むことは難しい古風な名は 一度覚えたら忘れられることがない印象的な不思議な響きを持っていた 恐らく同じ名はこの世にふたりといないだろう 構内放送はしばし経ち 再び探している旨を繰り返す もう死んだはずの女 この世にいるはずのない人間の名を

この目で確認をしに行くべきだったのだろうか?