1118

彼女と初めて出かけたのは雨の日だった それからいつも ふたりで出かけるときには雨が降った とても降るような空でない日でさえ 突然どんよりとした雲が広がりだし ぽつぽつと地面を濡らし始めたのだった

わたし自身は雨に降られるということは滅多にないので 折畳み傘なんてものを持ち歩いたことがなかったのだけど 彼女はいつだって鞄の中に潜めていた 大きな手提げには晴雨兼用の傘が ちいちゃな革製の鞄には軽くて細い折畳み傘が入っていたのだ わたしといえば家を出るときに降っていたら使う大きな傘の一本しかない それでどうというわけでもないけれど 彼女と出かけるときは雨に濡れた 今日こそは降るまいと信じて出かけたから

 

雨の日 彼女から結婚披露宴の招待状が届いた 宛名のインクが濡れて滲んでいる 宴の日はどんな空模様だろうか少し心配ではあるけれど いつかふたりで歩いた夏の夕立ちのことを愛おしく思い出した