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情緒の乱れ 暴走する被害者意識 取り越し苦労の春 思い過ごしで済むならそれでいい 早く楽になりたい

 

もしも屈強な男に生まれていたなら 世界中を旅して暮らしたかった 雪が溶けない高い山を越え 羅針盤だけが頼りの大海原をゆき 赤い砂漠で朝陽をのぞみ 密林で珍しい鳥や動物の鳴き声に耳を澄ましたかった 誰かに殺されるのはごめんだけど 死んだあとなら 獣に食べられたっていい もう肉体がただの肉でしかないなら それが自然の掟に従うということ

 

鮮血に対して慣れている 排水溝で 血が流れてゆくことに 下腹部が痛むことに 凝固した赤黒い膜が滑りおちてゆく不快感に 慣れてしまった 業が深いなど誰が言い出したの