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エイプリルフールだったのでなにか気の利いたことを言おうと思っていたのに ひとつも考えつかないでいたけど ヴォトカが流れる河なんてなかった

 

ほんとに?

 

つまらない覚書を残す いつだったか飲みすぎた夜のこと わたしは最終の特急電車に揺られながら座席に身を委ね朦朧としていた 外はとても暗い 山あいの高架に敷かれた線路を走っているので街灯などないのだ 車内は煌々と蛍光灯がつき明るいが人の姿は疎らである 週末の夜ではあるが  既にほとんどの乗客は降りてしまったあとだった

何本目かのトンネルに入ったときだった 突然意識が明瞭になり しかし眼に映る景色がすべて激流に飲み込まれ とても明るい光のほうへ向かってゆくのを感じたのだ 窓の外はその夜の宴で飲んだヴォトカのように澄み渡っている なにもみえないはずなのに明るかった 眩いばかりの光と轟音 そのときヴォトカの流れのなかにいたのだ

 

それがこの河の話だ