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菜食主義者を娶った男と食事へゆくときは 肉を選ぶことにしている なんでもいいですよ という彼が 妻の前では絶対に肉を食べる姿を見せないことを聞いたからだ わたしも事情があって家では肉を食べられないので ふたりで訪れるのは逢引ではなく 火がよく通った合挽き肉の店 混雑した昼休み 額がぶつかりそうなほど狭い席に向かいあって座る 逞しい腕の中年女が運んでくる銀盆に載せられた熱い鉄板のうえで肉汁の爆ぜる音 よく焼けた肉の匂い 肉 肉 肉 束の間の休息時間にわたしたちはほとんど無言で 貪りつくように平らげた 店外に並んでいるひとのために速やかに席を立ち それぞれ会計を済ませて外に出ると街路樹の新緑がきらきらと輝いてみえた

 

午後の会議はなんとか正気を保てた あまり覚えてはいない