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去りゆくひとの 哀しげに丸まっていた背中がいつしかしゃんと伸びて 足取りも軽やかになっていたことだけが救いのようなものだった 何も出来なかった 無力そのもので 誰もが何もしなかった そのことを思うと苦しい

人生において素晴らしいと考えられている時期 若さと美しさが共存していたあの頃 いつも孤独で居場所などなかった 女性誌に載っているような華々しい人生設計とは違う時代 別の世界の話で つまり戦争など無かったのに ただひとり見えない敵と戦い 消耗し 目の前の人々から罵倒され 過ごしていたのだ そのことについて自己憐憫に浸る必要はないけれど ただ 何も出来なかったことだけが今は悲しい