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水着は使わなかった 泳ぐのに適した場所も 水に触れられる場所もなかったから 早朝 大通りのロータリー中央に植えられた花壇の近くで回るスプリンクラーだけが冷たい飛沫を飛ばしてきたけれど バイクや自動車の間をすり抜けて植込みに入るわけにはいかないし そもそも水着でいるのはおかしかった 違和感がないことは大切なことだ どれだけエキセントリックでもエキセントリックな物事として違和感なく溶け込んでいるならそれは確かなものなのだと思う でも環状道路を水着で走っていいのは映画のなかだけだ