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教会のなかは静かでひんやりとしていた 足音とひそひそ声が不快ではない程度に聞こえるその空間を表現するには まさしく静謐という言葉が相応しかった 石造りの床 壁 天井 そして石像 今は誰も触れることが出来ないパイプオルガン 調律するひとがきっといるのだろう 恐らくとても旧く 特別なときにしか演奏されることのない楽器を いまこの世界にあるすべてのピアノやオルガンと同じように調律するひとがいるのだろうと思うと 少しわくわくした
蝋燭を献灯して しばらくお祈りをした 願うことはいつも同じ ひとつだけ 火が消えないようなしながらどこかを往復しなくても良かった

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