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まだ幼かったころ 家のちかくの山が燃えた 大方登山客の煙草の不始末とか そんなことが原因だったと思うけど 理由がなんであれとにかく燃えてしまった まだ少し寒い時期で空気が乾いていたせいか 勢いよく斜面が赤く燃え上がってはいたけれど なぜか これ以のことは起きないから大丈夫だと思っていたし 事実 消防隊の活躍により鎮火した 谷のかたちに沿って 黒く焦げた斜面が見えていた かつてそこには木々が立ち並び 様々な植物が覆い茂り 雪が降れば粉砂糖をふったように見える山があった

それからもう5回目の冬季オリンピックが開催され 山はほとんど以前と変わらない姿になっている 村で暮らす若者たちの多くは火事の前の山を知らないなら 以前のような姿とはなんだったのだろうか もうどこも燃えなくていい 新緑の青さだけが輝けばいい